この2月に3年ほど前に出願した特許でとうとう特許査定が取れた。
これまで、特許出願は4件しているが、特許がとれたのは、はじめてのケースだ。
特許内容は、このサイトでご紹介している 「革に立体加工を施す技術」である。
さて今回のブログでは、私のような素人が実際に特許を取って感じたことを紹介したいと思う。
特許というとその権利で大きなお金が手に入るように思っている方がいるかも知れないが、実は特許が実際にお金になるというケースがどのくらいあるのかという統計データは取られていない。
ただアメリカの大学のデータでは、300件の発明中、2から5件で巨額の利益が出たというものがある。
ここの巨額の利益というのはあくまでもアメリカのケースなので、日本ではそうも行かないようだ。
つまりドクター中松のようなケースはとても稀だと思っておいたほうが良い。
特に一般人が取った特許は実際に商品化されたり、権利が買い取られる事自体が珍しい、だからニュースになったり注目されたりするのだろう。
当然私のケースも 特許取得=権利料(ライセンス料)という単純な展開にはならないと思っている。
では、なぜ私は特許取ったのかそのあたりを説明しようと思う。
以下ような内容で書いている。
1.なぜ特許取得を目指したか
2.特許取得の費用と時間
3.特許取得後にすること
4.特許出願前に考えておくこと
1 .なぜ特許取得をめざしたのか
このブログで書いたが、90年台から2000年代にわたしは大阪の日本橋という街でマニア系のショップを経営していた。
この店を閉めた理由は周辺に同じ商品を扱う競合店が増えて、売上が落ちてしまった為。それがきっかけで商売替えをすることにした。
その後はハンドメイド作家と仕事をしながら、ネットビジネスをやろうとしたのだが、どれも大手の進出が予想できた。これまでも競合店との戦いにはうんざりしていたし、大手相手に勝てるはずもないと考えたとき、特許という制度が浮かんだのだ。
特許を取っていれば競争にさらされずに商売ができる
最初は自身の商売を競合から守るために特許という制度に興味を持った。
当時たまたまこの「革への立体加工の方法」思いついたので弁理士に相談に行ったのだが、それは特許取得の相談でない。
「このアイデアが誰かの特許を侵害していないか」を知りたくて無料相談を使ったのだ。
担当の弁理士がその場でネットで調べてくれて、
「このアイデアには今のところ特許侵害はなさそう」さらに「出願で特許も取れそうです」と回答をもらった。
これをきっかけに特許取得の技術で事業を進めることにしたのだ。
そしてこの特許出願の作業はこのときの弁理士に依頼することにした。
2 .特許取得の費用と時間
特許取得には一連の手続きがあります。
手続き
注意が必要な点が2つある。
1つは、出願から1年6ヶ月経たないと、出願内容は公開されない。出願時には同じような特許がないと思っていても、出願後に同じような出願が公開され、時間的にそちらのほうが早ければ自身が特許を取ることは困難になる。
弁理士が「 今のところ特許侵害はなさそう」といったのはそういう訳である。
公開までの1年6ヶ月の期間で実際に特許査定をするかどうかを見極めることになる。
2つ目は 出願から3年以内に審査請求されないものは自動的に特許になる可能性を失う。
「特許出願中」と広告等に書かれていることがあるが、これは特許持っているわけではなく、また将来特許が取れるという保証でもない。
そういった中には 審査請求しないで出願から3年間だけ独占的な販売を目論んで競合を牽制する目的で出願するようなケースもある。
費用 今回の特許査定のケース
a)出願費用
弁理士事務所 約300千円
特許庁 15千円
税込み合計金額 326千円
b)審査請求
弁理士事務所 15千円
特許庁 47千円
税込み合計 62千円
c)拒絶に対する意見書・補正書の作成
弁理士事務所 0円
特許庁 0円
d) 特許査定 成功報酬
弁理士事務所 170千円
税込み金額 183千円
e) 特許の登録費用
特許庁 20千円
合計費用
弁理士事務所 485千円
特許庁 82千円
総合計(税込み)591千円
少し説明すると、私のケースでは審査請求の後、すぐに特許査定がでた。
もし特許査定がでなければ、意見書や補正書を提出して審査を再度依頼しなければならない。厄介なのがこれがいつまで続くのか分からないのだ。
何年もこの作業をして結局、特許査定が降りなかったというケースはざらにある。その作業の弁理士費用を負担しなければならない。
このあたりは弁理士の腕の見せ所ではあるのだが、弁理士の腕の善し悪しなど、一般人には分からない。
費用60万円弱という金額は決して安いものではない、弁理士は「特許をとれば権利を主張できる」と簡単にいうが、主張だけできても金銭的対価が発生しなければこの費用は捨て金である。
実際、日本では休眠特許とよばれる、特許であるが、金になっていない権利がほとんどだ。
企業ならば商品やサービスを競合から守るために特許出願は経費として考えるが、個人となるとそうは行かない。そのあたりの感覚は弁理士には理解できないようだ。
さらに特許に関わる費用は、クラウドファンディンでの資金調達にはそぐわない。特許が取れるかどうか分からないことに金は出せないし、集める方も内容を公開してしまえば特許取得前に盗まれてしまうリスクがあるからだ。
このように特許取得は独特の制度であり、資金を他から集めるてやるというものではない。
3 .特許取得後
特許出願 = プロモーション
私は「特許は 売れるもの でなければならない」と思っている
私の出願内容は「作るための道具」に当たるので、ハンドメイドホビー等、作り手マーケットに向けたプロモーションが必要となる。
特許出願してから後は、 プロモーション を第一と考えている。
4 .特許出願前に考えておくこと
これから特許取得を考えているなら、「画期的な技術、大量に生産される物 の特許」でない限り、大きなお金になると思わないほうが良い。
また一旦特許をとっても特許無効請求という裁判に巻き込まれるケースも有る。大手企業がいるマーケットでは注意が必要だ。
だから 特許でちゃんとビジネスして儲けるという 気概が必要。
もちろん特許の売り込みは、しないよりしたほうが良いだろうが、しかし簡単にライセンス料をもらえると考えるのは違う。
オンリーワンのビジネスで儲ける為のモチベーションの源泉、そのための特許だと思うべきだ。
見て真似できるような技術は特許を取らないと守れない。見てもよくわからないものは特許を取る必要はない。
アイデアを特許出願すると内容が公開されてしまう、たとえ特許が取れても権利は20年でなくなる。 このことは頭に叩き込んでおくべきだ。