柿渋という古くからある伝統的なコーティング材があります。
渋柿の果汁から作られるもので木の表面や紙、布に塗布することで防腐作用、防水作用、殺菌作用の効果を生みます。なんと平安時代からつかわれているそうです。
漆も同様にコーティング材です、これは漆の木に傷をつけて樹液をあつめてつくります。
こちらも木の表面に塗ることで柿渋同様、防腐、殺菌、防水などの効果があり、更に非常に美しいということで高級工芸品として扱われます。そして匂いがないので食器との相性が良いのです。
柿渋は、材料は簡単に手に入るのですが、匂いが強いということでこれまで用途が建築などに限られていました。
ところが最近の柿渋は改良されて匂いのないものが作られていて、これを使った商品が開発されてきました。
その一つが 10年ほど前にネットでブームになった 柿渋石鹸です。
この商品は中年の加齢臭に効くというキャッチで数十万個を販売する実績をつくりました。
私はこの仕掛け人にお話を聞いたことがあります。
その方は和歌山の柿渋メーカーから材料を分けてもらい最初に消臭剤を数種類作ってテスト販売されたそうです。
その際にただの消臭剤ではなくピンポイントの用途をねらったのです、
たとえば「剣道の防具のための消臭剤」こんなとてもニッチな市場をあえて狙ったのです。
このような商品を試作しては業界向けにプロモーションをしていたそうです。
そうしているうちに石鹸メーカーから声がかかり、柿渋で石鹸を作るという企画が始まったそうです。
彼はサンプルは作りましたが、販売の為の製品を作ろうとしませんでした。
柿渋を知らない人に柿渋の良さをアピールしたかったのです。
そしてこの消臭剤を売りたい人や、柿渋で商品を作りたい人、主に専門家、プロの人たちを見つけたことです。
今では大手メーカーとのお付き合いもあって、柿渋の効果をうたった商品開発の裏方としての仕事をされています。
これは手づくり作家には大変参考になる事例だと思います。
柿渋を新たに応用できる市場を探すことに注力しただけです、あとはその分野の専門家が仕事を進めてくれたという構図です。
何でもかんでも作ろうとしても身はひとつです。
何かの得意な人がいたらその人に自分の得意な物、得意な技が役に立たないか聞いてみること、これも大切な営業活動です。